Fasciaリリースの基本と臨床
本書は基本的に注射によるfasciaリリースについての解説であり
当然医師に向けた疼痛治療がその中心的内容となります
そういう点では私らには関係ないものなのですが
私が本書を読みたかったのは我々が今まで筋膜と呼んでいたもの
あるいはfascia(膜)というべきものの知識の更新と
エコーを用いた身体の中で起きている状態の
客観的な認識がしたくて購入
ちょっとばかりネタバレ感があるところはご容赦いただきたいのですが
左の画像は僧帽筋と棘上筋の筋膜同士が重積、肥厚した状態を映し出します
さらに右の画像は筋膜リリースにより癒着した筋膜が剥がされ正常な状態に戻ったことを映し出しています
ここで重要なのは我々手技療法家が行う
「こりをほぐす」であったり筋拘縮などを画像であらわす画期的なものだと言えるでしょう
我々のギョーカイはこのような画像所見はありませんので
触覚によりあくまでも主観的な感覚器官による情報が頼りだったわけです
俗に言うところの「コリ」って筋膜同士の癒着であったり
本書のミソになる部分として「筋膜」という表現に対し
昨今異論が唱えられ「筋肉」の膜だけではなく
広く皮膚、皮下組織、筋膜、腱、靱帯、体脂肪、腹膜、髄膜、骨膜すべて含まれた「膜」こそがfasciaであることを述べられています
ずっと以前より筋膜リリースという概念がギョーカイの流行みたいな感じではありましたが
あくまでも筋膜というものに注目し
筋肉のストレッチに似た技法がその中心となっており
本書で提唱されるfasciaの概念とは異なるものであると言わざるを得ません
本書の後半で具体的な部位の問題点をエコーにより
可視化できる状態で解説がありますが
今後そういった傾向が広がれば
従来の筋膜リリースも進化の余地を残すものと期待したいです
そういう点で福井勉先生が提唱された「皮膚運動学」も
皮膚と他の軟部組織との癒着という視点から展開された理論ですが
この理論もfasciaリリースと共通した要素であり
再評価されるべきだと考えます
そのうえで福井先生がテーピングという手段で問題解決を図ろうとなさってますが
手技による方法論も考慮の余地があるでしょうし
本書のように注射というやり方も出てくるだろうと思います
私にとっては長年の疑問点がかなり整理され
スッキリした感じがしてなりません
こういうことがわかってきたのはすごく楽しいことです
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