腰痛と声
ずいぶん昔のお話なんですが
あるアナウンサーの方がおいでになりました
主訴は腰痛と声が出ないこと
声が出ないといっても普通にお話はできますので声が出ます
要はアナウンサーとしての声が出ないということ
歌手やアナウンサーや役者さんは
腹式呼吸でハリのある通る声を出します
ところがその方はアナウンサーの命ともいえる
プロとしての声が出せずボソボソと聞き取れないほどのか細い声しか出なかったのです
私自身も激しい腰痛に見舞われたとき
喋れなくなり絞り出してかすれ声で喋った経験があります
この場合問題になるのは横隔膜の緊張と腰方形筋の筋拘縮
発声の際に横隔膜が大きく伸びることで胸腔を圧迫し
空気を押し出すような恰好になります
横隔膜だけではなく筋肉は自動で縮むことはできますが
伸びるときには作用せず他の筋肉に力で受動的に伸びるのです
たまに腹式呼吸を指導される際
「横隔膜を伸ばして」ということを言われる方もいますが
横隔膜が自動で伸びることはありませんので意識するポイントとしては間違っています
閑話休題
腹式呼吸の場合呼吸筋としての腹筋群や骨盤底筋を収縮させて
腹腔の空気圧を上げることで横隔膜を押し上げるのですが
この時に第12肋骨を固定し横隔膜を安定させる役割を果たすのが腰方形筋なんです
(画像:骨盤と仙腸関節の機能解剖)
その腰方形筋が緊張したままでは
第12肋骨は不安定となり、その不安定さは横隔膜の弛緩の妨げとなります
イメージとしては足元が不安定なところに立つと
全身が緊張で硬直してしまうのに似ています
身体というのは一次的に安定を欲し
安定が確保されてから動きが可能になります
腰方形筋は腰痛関連では上位にランクされる筋肉です
第12肋骨を安定させるというのは全体像を考えると
骨盤に対し腰椎から肋骨全体、いわば体幹を安定させる働きに他ならないからです
身体にしたら声を出すよりも身体を安定させる方が優先されるということになります
だから下肢の緊張を取り除き骨盤の自由度を回復させることで
腰方形筋の緊張を取り除くことができれば
自ずと腰方形筋は第12肋骨を安定させ横隔膜が自由に動くことができ
それで初めて声がしっかりと出るようになるわけです
施術を進めているうちにお話している声が
少しずつ大きくなりだし最後には響く声が出るようになり
施術の進捗状況が手に取るようにわかりました
普段喋るときそんなことを意識せず喋るのですが
腰痛になり声が出なくなって初めて
こういった関連性があることに気づくようです
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