想定外
想定外 なぜ物事は思わぬところでうまくいくのか ジョン・ケイ
意思決定には二通りあって目的を決め一直線に目標に向かって行動するタイプ
それとは逆に回り道をしながらそのときに応じた意思決定をするタイプがあるそうです
一般論としては目的を定め計画的に行動する方が到達しやすいと考えるところですが
著者は回り道をする方がいろいろな局面で上手くいくことが多いと説きます
内容は終始回り道をすることの利点を様々な例を出して解説しています
そこで首をひねったのは「想定外」というタイトル
いつになったら想定外の事態に陥ったとき
どのような意思決定をするのかについて語られるのか?
半分くらい読んだあたりで肩透かしを食らったような気分になりました
本書の原題は「Obliquity」これは「曖昧」と捉えるようですが
それさえ引っかかる箇所が登場しません
これが私にとって一番の想定外だったのは否めません
ところがこの回り道しながらの意思決定は「想定外」や「曖昧」と最後の最後でリンクしてきました
前半大きくページを割いて紹介する例は目的を定め直線的に行動しても想定外の事態が起こり意外に目的に到達していないということが後半の種明かしで理解できてきました
自分の周りにある状況においてすべての事象を把握できるはずもなく
限られた判断材料の中で目的を決め行動しても
そのときそのときの偶然の出来事で前提条件が変わる
つまり周りの環境は常に曖昧な状態にあり常に変化がおきるわけで
そんなとき直線的な思考や意思決定に寄りかかると
目的から遠ざかることが多いというのが本書の趣旨だったようです
そこで普段から回り道をして無駄なことや関係ないこともしておくと
意外に変わってしまう状況下で多くの選択肢が生まれてくるということのようです
こういう発想は個人的に大好きです
予想が外れることなんて日常茶飯事ですから
硬直した発想で立ち回ると失敗することもあるわけですから
常に何が起きるかわからない世の中で一見無駄に思えるカードもストックしておいた方がいいと思います
本書は一貫して回り道を勧め直線的な発想の失敗例ばかりを挙げていますが
それもどうかわからず目的を決めて行動して上手くいくこともあるわけで
全部が全部筆者の言う通りとは限りません
それも「曖昧」な感じで覚えておいた方がよさそうです
それはそうと成功者が語る成功の秘訣は後付けであるというくだりは面白かったです
成功も失敗も偶然の要素が絡んでくるので
成功者の真似をしても成功するとは限らないというのはいいところをついていると思いました
さらに合理的に見える意思決定の多くも先に出た結論に後付けの都合のいい理由で援助しているに過ぎないという解説も的確だと感じました
知的な方ほど直観的な判断を後押しするような理由を言われます
そのくせ反対意見を素直に受け止めることなく強い反論をされます
たぶんご自身が絶対に正しいと信じ込んでいるからだと思いますが
こういう発想だと違う結果が出たとき無理な理屈で言い訳をしがちです
これではいつまでたってもいい結果が出るようには思えないのです
相談を持ち掛ける人の多くは自己主張ばかりでこちらの意見をあまり聞いてくれません
これも先に自分の中で結論が出ているのでしょう
相談に乗ってほしいのではなくむしろ自分に都合のいい理由づけを欲しているんだろうと解釈せざるを得ません
本書で主張される回り道的な意思決定は
過ちは過ちで素直に受け止めあっさりとそれまでの考えを修正できる自由さを言うのだと感じました
そのために絶対的に自分が正しくて間違っていないという硬直した思考パターンではなかなか上手くいかないよってところなのでしょう
それまでの想定外だったことをいち早く想定し
再びシミュレーションし前に進む懐の深さは憧れてしまいます
頑固さは身を滅ぼします
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