もう一つの意思
この間「健康の鍵は上部頸椎」という本を読んだのですが
そこには上部頸椎のみにアプローチして
本来有する「先天的知能」を目覚めさせ
治ろうとするシステムを喚起するというようなことが書かれていました
あまり世間では「先天的知能」なんて言葉は使われません
我々の同業者はこういう言葉の使い方を好んでする傾向があります
医者や研究者とは同じ土俵に立たず
批判を受けにくいという便利な要素もあるんですが
「先天的知能」というネーミングはともかく
身体のことにある程度携わった人なら
こういう要素が現実にあることは誰でも知っているでしょう
本人の意識している感情や思考による意思形成については
あらためて論じる必要もないでしょう
ここで申し上げたいのは本人が認識しない
身体が生まれながらにして持っている意思についてです
例を挙げればわかりやすいのですが
食事をすれば本人の意思に基づくことなく
胃腸が消化・吸収をし始めます
全力疾走すれば身体が必要とする血液の量を
心臓が一生懸命に送り出すことも本人の意思には基づきません
外部から体内に異物が入れば勝手に免疫機能が活発になります
骨折したら身体は修復にかかります
膝をすりむいても知らないうちに治ってしまいます
赤ちゃんは本人の意思とは関係なく
いずれは大人に成長します
これらはすべて当たり前のことではあるんですが
きわめて緻密にそのメカニズムが決められ
滅多に失敗することなく遂行されます
人間の中で一番賢い人がやったとしても
これだけ見事な仕事っぷりを真似できる人はいないでしょう
冒頭で紹介した本に書かれていた「先天的知能」という言葉を説明すればこんな感じになるのでしょうか?
本人の認識している意思とは
また別の次元で見せる意思というのは
私の仕事の中でも随所に現れます
先ほどご紹介した身体機能にかかわる部分だけではなく
自分の身体を守ろうとする意思みたいなものを
時々見ることがあります
自分の意思で整体を受けに来たのに
身体は警戒心むき出しで緊張してたり
身体を動かそうとすれば身構えたりします
中には触っただけで拒絶反応を示す過敏な方もいらっしゃいます
ここまでくれば「先天的知能」という枠の中には納まらないでしょうね
なぜならば完璧で間違えることがないというタイプではなく
その方の個性に従属する意志だからです
だから「先天的知能」が上記の本では宇宙の法則と同質であると説明されてますが
身体の中のもう一つの意思はいわばローカルルールみたいなものです
人によって違うし、その時の状況でいくらでも変わります
潜在意識って言った方がいいのかもしれません
ただこれも馬鹿にできないのは
その人の本当の状況を的確に表すサインであるケースが多いからです
先週参加したワークショップでも自閉症の方が出すサインには意味があるというお話がありましたが
言葉にして表すことができない身体由来のサインを
きちんと受け止めて状況を把握するのは我々の仕事にとって重要な要素だからです
逆にそれができなければ的外れな方向に進む可能性もあります
この仕事を続けて思うのは言葉で表現されることって
氷山の一角なのかもしれません
あとは身体を触って隠れた部分を明らかにしていかなければなりません
そんなときに身体から表現されるもう一つの意思を探ることは
大きな手掛かりになるに違いありません
それに寄り添うように施術できたら
身体も喜んでくれるのではないでしょうか?
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