積み重ね
施術中、同じところを触っているのに
受けておられる方の感覚の中では違うところを触られているという誤解が発生します
これはどういうわけかというと
同じ筋肉の同じところを触っていても
刺激が伝わるのは表面からになります
しばらく続けているとやがて表面は弛緩し
刺激は少し深いところに届きます
この作業を積み重ねることで
奥の方で芯のように固まっているところにたどり着きます
一つの筋肉にアプローチする場合
奥行きのことを考えなければいけません
いきなり奥の方を狙うと表層に過剰な刺激が加わったり
奥の方へ十分な刺激を加えることができません
技法の中にもそういう奥行きを考慮しないものは多いのですが
私の経験上効果が出るのは軽微なところから作用して
最後には一番利かせたいところはあまり影響を受けず
肝心な部分が悪いままというケースを多く見てきました
私なりには一つの技法で問題解決を図るよりも
複数のアプローチを組み合わせることで
様々な角度からの作用を得て少しでも深いところにまで効果を得るための施術手順を考えています
もうずいぶん前から通われている方で
右腕の挙上制限があります
いわゆる「五十肩」というやつ
こういう場合の施術手順も私なりにあるわけですが
何せ長年かけての筋拘縮が肩関節をまたぐ筋肉のほとんどに認められるので一筋縄ではいきません
毎回、施術終了後痛みは取れ可動域も改善するのですが
これもせいぜい持って2~3日
時間が来れば時限爆弾のように痛みがぶり返します
これじゃあ「治った」とはいえません
余談ではありますが施術終了後に痛みが取れ
お互いに「治った」と喜ぶ場合もありますが
数日で元に戻るなら治ったとは決して言えません
我々のギョーカイでも「治る」といいながら
わずかな時間して維持できないことも多々あります
だから治療家が自らアピールする「治った」という言葉も
額面通り受け取れないこともありますのでご注意ください
閑話休題
ある日その方からお電話があり
施術後数日たってからも痛みがぶり返さないとのこと
だからこれからは同じやり方で施術してほしいというご要望でした
私はいつも何回かは定型的な施術手順を踏みますが
それで効果が出なければわりとあっさりと方針を変えます
手持ちのカードはいくつかあるのに
結果が出ないまま一つのパターンに固執するのはナンセンス
だから期間を区切ってやり方を変更することもあります
それでもその方も毎回違うやり方をされていると感じていたようでした
しかしどんなやり方をしても一回や二回で改善することはないので
実はずっと同じやり方で同じ部位にアプローチしていました
その甲斐あってようやく全体に影響したことで
目ざましい改善をみせたのですが
受けている方にとってはその時だけ特別な何かがあったように思われたみたいです
私にとっては効き目の薄かった施術も
積み重ねることで生きてきたと考えていました
そんなことをご説明したら同じ場所に同じ施術をされたという感覚は全くなくて
全然違うところを触られたと思い込んでいたといわれます
確かにその感覚もまた正解だったりします
私としては同じところを触っていても刺激が伝わる深さの差が
このような場所的な違いと認識されるのですから
「身体の深さ」というものにあらためて驚かされるのでした
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