日本語のすすめ
半世紀以上も生きているといろんな人に出会うもんです
ほんの一瞬の出会いで数分後に忘れてしまう出会いもあれば
長く思い出に残る人もいれば
人格形成に影響する人もいます
本書の筆者菊谷彰さんは私が15歳のころ出会いました
お目にかかった機会はわずか数回です
しかし菊谷さんから頂いた言葉のひとつひとつが
今の私に大きく影響していることは間違いありません
ちょうど今から40年前
菊谷さんはNHK大阪放送局のチーフアナウンサー
我々のような高校生に話し方の指導をしていただきました
立場上すべきことが山ほどあったであろうことは
大人になった今なら容易に想像がつきます
それでも実に気軽にご指導下さいました
すごいエライ人なんですが
未熟な高校生に合わせてた言葉で
わかりやすく自分の考えや想いを伝えてくださったのが印象的でした
私が直接教わったことは
「ひらがなでしゃべりなさい」ということ
自分の考えを人に伝える時
相手が受け入れやすい言葉を選択する習慣を身に着けなさいという深い意味があります
得てして難しい言葉を使えば賢そうに聞こえるので
知っている限りの難しい言葉を使いたがるものですが
相手によってその言葉の選択を的確にしないと
一番言いたいことが伝わらないといわれました
もちろん専門家が相手であれば専門用語の方が的確に伝わります
しかし一般の方に難しい言葉を使ってもわけがわからないことがあります
難しい言葉を使うには知識が必要ですが
わかりやすい言葉を選択するには知恵がいる
今なら菊谷さんの言葉をそんな風に解釈できるほど
私自身大人になってしまいました
その他にも「高校生なんだから明るく元気よく話しなさい」と何度も言われました
結局この年になっても明るく元気よく話す習慣が身につき
おかげで対人関係においていっぱい得をしました
本書は上手くしゃべることよりも
心を込めてしゃべることについて
菊谷さんらしいわかりやすい口調で書かれた本です
出会って翌年にはNHK東京局に移られ
その後失語症というアナウンサーにとって致命的な病気になられたとこの本にはあります
ずいぶん前にお亡くなりになられたそうですが
いまさらながらショックを受けました
この本はアナウンサーのトッププロが書かれたものです
本気の技術指南は圧巻です
はっきり言ってNHKアナウンス読本よりもはるかに難しいです
今さらそんな稽古はしたいとも思いませんが
菊谷さんのアナウンサーとしての矜持が垣間見えました
本当は厳しい人だったんですね
あなたに出会えてよかったと心から思います
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