再生
「日本一汚い川=大和川」が再生している…野鳥、魚の姿、水質改善示す数値も
「日本一汚い」という汚名を着せられてきた大阪府、奈良県を流れる大和川。
近年、水質は改善し、国土交通省の平成24年の全国一級河川の調査では、過去10年間に水質が改善された調査地点の上位4位に大和川が入り、25年の川全体の平均数値では過去最良だった。調査地点付近を訪れると、中州に止まっていた無数の鳥が舞い、岸辺を散策する人たちに安らぎを与えていた。しかし、水質ランキングではここ数年も下位に甘んじている。昭和40年代、生活排水や工場排水、ごみなどで著しく水質が悪化した大和川は再生したのか。(張英壽)
■四万十川に比べれば…
大和川にかかる遠里小野(おりおの)橋。この調査地点が10年間の改善率で全国4位となった場所だ。大阪市住吉区と堺市堺区の境界になっている。
初春のある日、この付近を訪れた。
脳裏にあったのは「日本一汚い川」というイメージ。しかし、そこには白い鳥が中州で羽を休める姿があった。川幅は広く、水深はあまりない。遠くには、路面電車として知られる阪堺電気軌道の橋が見え、時折、電車が通り過ぎていく。鳥たちは一斉に羽ばたき、空中を舞った。ゆっくりと歩を進める首の長いサギも見えた。
周りには工場が立ち並ぶが、橋の上から川の水を見下ろすと、透明度は高いようだった。
川辺を散策していた堺市堺区の無職男性(68)は数年前に山口県下関市から引っ越して来たといい、ウオーキングのためによく来るという。「昔は知らないが、水は汚くないですよ。魚も見られるし、カモやサギ、そのほか白い鳥もいる。昔汚かったというのは想像できない」。
川辺で練習をしていた私立高校陸上部の男子生徒(17)は「浅いところは底まで見える。数えられないくらい鳥の大群も来る」。ただ顧問の男性教諭(29)は、清流として知られる四万十川がある高知県出身で、「四万十川などに比べれば汚い。タイヤもあるし、ごみが多い。ひいてしまいます」と率直に感想を話した。
川辺にはところどころごみが見えるが、それほど多いという感じもしない。生まれ育ったところで感じ方は違うということだろう。
一帯は河口の大阪湾まで西へ5キロほど。国土交通省大和川河川事務所(大阪府藤井寺市)のホームページを見ると、河口区間は広大な干潟が形成され、ユリカモメやウミネコなどの集団休息地となり、カモ類やカモメ類が多く飛来すると記されている。魚類では、ボラやメナダなどが生息しているとしている。
日本野鳥の会大阪支部の橋本正弘支部長は「大和川の河口付近はユリカモメが多い。鳥も異臭などがするといやがるので集まってこない。水質がよくなっていることのあらわれでは」と話す。
■アユ産卵、メダカも
川の水質を示すのに一般的に使われるのが、生物化学的酸素要求量(BOD)という数値。微生物が水中の有機物を分解するのにかかる酸素量を指し、その数値が大きいほど水質が悪く、小さいほど水質がよいということだ。
国交省と旧建設省は大和川で昭和38年からBODを調査。30年代までは人々が川遊びを楽しむ場所と親しまれていたが、高度経済成長期の昭和40年代には水質が急激に悪化。調査地点の平均で、1リットルあたり38年には4ミリグラムを下回っていたが、45年には最悪の21・4ミリグラムまで悪化した。
悪化を引き起こしたのは、洗剤が入った洗濯や炊事場の水といった生活排水、工場排水、屎尿(しにょう)、ごみなどさまざまな要素がある。生活排水が川に流れる要因としてあげられるのが、下水道の未整備だ。下水道に流れた水は処理場で汚れを取り除くが、大和川河川事務所によると、大和川流域の普及率は、平成13年度まで全国平均を下回る状態が続いていた。またかつては大型のごみも多く、同事務所の担当者は「昔は産廃や車のスクラップも投棄されていた」と指摘する。
国交省のBOD調査では最悪だった40年代以降、改善傾向となり、平成18年からは平均値で5ミリグラムを下回った。最新の25年では、観測史上、最も低い数値となる2・5ミリグラムを記録している。
環境基準を満たしているかどうかをみる場合は、この平均値ではなく、複数の調査地点のデータから特別な算出をした「75%値」と呼ばれる別の数値を使う。それでみると、ここ数年、大和川は環境基準(中上流、下流で異なる)を下回っている。
国交省が昨年8月に発表し、いまのところ最新データとなる24年の全国一級河川の水質状況では、過去10年間の改善状況として、大和川の遠里小野橋調査地点におけるBODが上位4位に入った。遠里小野橋は、前述した水鳥が飛び立った付近だ。14年は1リットルあたり6・1ミリグラムだったが、24年は2・1ミリグラムと3分の1までに減っている。
さらに清流に生息するとされるアユの産卵が平成19年に初めて確認された。20年は確認されなかったが、21~25年も産卵が確認された。またメダカも平成2年以降、5年に一度の調査で確認されており、17年は最多の1356匹だった。
■11回「ワーストワン」
大和川は全長約68キロ。流域は約千平方キロに及ぶ。一般的に、大和川など複数の都府県にまたがる大きな河川は、国が管理する一級河川だ。
水質の改善が著しい大和川だが、昭和47年から平成23年までの国交省、旧建設省の調査で、全国の一級河川と比較したBODでは、なんと11回にわたり不名誉なワーストワンとなっている。下から2番目に悪かったのは23回、3位は5回、4位は1回。つまりこの40年間にわたり下から1~4番目に悪い水質を維持しているのだ。
近年では、平成17年から19年まで3年連続ワーストワン。その後はいずれも下から20年2位、21年3位、22年4位、23年3位だ。全国比較ではやはり汚い川のままといえる。
なぜ水質改善率が高いのに下位に甘んじているのか。
「全国的に川がきれいになっている」。大和川河川事務所の担当者はそう指摘する。
その大和川は現在、「汚れの原因の約8割が生活排水」という。流域で下水道が完全に整備されていないため、浄化されない排水が川に流入しているためだ。国交省のほか、流域自治体、企業などが協力し、水質改善に取り組み、ポスターなどで「食事を残さない」「食器やフライパンなどをふき取ってから洗う」「食べ残しなどを流さない」とアピールしている。
「水質をよくするには、流域住民の協力が不可欠」と大和川河川事務所の担当者は強調する。
ただ、国交省は「一級河川全体の水質が上がり、ほとんどで環境基準を達成しているうえ、同じ川でも上、中、下流で水質は異なる」として24年調査から、一級河川の平均値を出したうえでの比較をしていない。今後、大和川のランキングを知るすべはなさそうだ。
自宅から徒歩5分のところにある川です
小学生のころキリギリスを採りに来たこと
川の中で遊んでいて深みにはまり溺れたこと
高校時代通学で堤防を走ったこと
すべてが思い出です
そんな大和川が抱える悩みは日本一汚い川という汚名
見た目にはそんなに汚いという感じはなく
道頓堀川の方がメタンガスもわいてよほど汚いのですが
それでも大和川が立派に日本一の座を譲らなかったのです
二十歳のころ台風被害で堤防が決壊し
大きな被害を与えたのをきっかけに護岸工事が始まりました
同時に水をきれいにするため川底に凸凹をつけ
酸素を取り込むような工夫もなされました
それでも上流の家庭排水が主な原因ですので
そちらが改善されない限り川の水はきれいにならないわけです
長年かけて意識改革が進みメダカが戻るようになったのは素晴らしいことです
私が小学二年のとき大和川の近くにある農業用水でメダカの群れを見つけました
翌年網を持って出かけたら一匹もメダカがいなくて肩を落として帰ったのを覚えています
子供の世代や孫の世代でメダカを見ることができればいいですね
| 固定リンク
コメント