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2014/03/27

横隔膜のお仕事

引力のある地球で生きる私たちにとって
前提となる大仕事は抗重力
これができないと立ち上がることはおろか
立体としての人の形を維持することができません
生まれて一年ほどで歩きだし
当たり前みたいになっているので気づかない人が多いのですが
我々の身体は常に重力に抗って生活をしています
重力ゆえにスーパーマンのように空を飛ぶこともかなわない
そういうように考えていただければ幾分か理解もしやすいと思います

皮膚の内側を構成する組織が活動しやすいように
骨格というものが活躍しています
まさに骨というのは形を維持し
多くの組織のスペースを確保するために存在するのです
ただ動物というのは動くことにこそアイデンティティがあるわけですが
骨格だけでは動くことはできません
その駆動力として骨格筋が骨の位置を変えるという作業をして人間は動くことができます

当然動くという作業においても重力に対抗しないといけないわけです
重力というのは地球上から垂直に力がかかるというのは言うまでもないこと
だからこそ人間の骨格筋の多くは重力に抗うべく地面から垂直方向に走ります
厳密にいえば斜めに走行するものもありますが
これらの多くも抗重力に役立つものと考えていいでしょう

ただ問題なのは三次元の世界において
すべて縦を意識したもので構成することはできません
それでは立体という形を維持できません
だからこそ要所要所で立体を維持するための力も持っておかないといけません

オステオパシーの技法に「横方向の開放」を目的とするテクニックがあります
上から「胸郭上口」「横隔膜」「骨盤隔膜」という部位を弛緩するテクニックです
これらはきちんと水平に形をなすものではありませんが
付着部をたどるとほぼ地面に対し水平にあります
私はけっこう頻繁にこれらの技法を用いるのですが
それだけ横方向を走る筋肉(群)が疲弊しているカースがおおいというわけです

とりわけ横隔膜なんかは硬い人が多いんです
横隔膜といえば息を吸うとき収縮させ胸郭を広げることで肺に空気を入れる役割の筋肉です
余談ですが「横隔膜」という名前から「膜」というイメージでお考えの人も多のですが
焼肉でいうところのハラミなんです
だから正真正銘の筋肉であることは申しあげておきます
いわゆる腹式呼吸で活躍するもっとも重要な筋肉の一つです
ここでまた余談ですが横隔膜の仕事は息を吸うことだけで
腹式呼吸でいうところの息を吐くときには
腹横筋や骨盤隔膜を主に使用します
たまに息を吐くときに「横隔膜をあげて」という人がいますがアレは間違いです

さてさて脱線が過ぎたようですが
横隔膜が疲れるということは息を吸いすぎて…
そう考えられるかもしれませんが
そんなヤワな筋肉だったらとっくの昔に呼吸困難に陥ります
寝ている間でもずっと呼吸しているのですから
けっこうタフなはずです

そのタフなはずの横隔膜が疲れて硬くなるのはなぜか
そういう疑問が生じるはずです
結論から言うと横隔膜が立体を維持するということに対するストレスがそれだけ強いということだと推測します
普段我々は当たり前に立体の身体を維持しています
お茶の子さいさいでやっているはずなんで気がつかないだけですが
これがけっこうな労力なんだろうと思うのです

空気中だとわかりませんが
海に潜れば立体の身体を維持する作業が実感できます
水中ダイビングなんかで深くに潜れば水圧が上昇し
身体に強い圧迫を感じます
とことん深いところに潜ればいずれはこの身体も押しつぶされるんでしょうね

海で身体にかかる負荷は水圧です
陸で身体にかかる負荷は気圧です
水の圧力に比べると微々たるものですが
まったくないわけではありません
それを覚えておかなければならないのは
気圧が高くても低くても横隔膜には何らかの影響があるということ
気圧が低くて身体が膨張しても困るからです

なぜか雨が降る日には予約の電話が鳴ります
そしてこられる方の多くは横隔膜が硬くなっています
それが直接どうこうということはありませんが
そこから二次的にいろいろな症状を引き起こすと考えています

横隔膜は呼吸筋という認識は間違いないのですが
それ以外にも大きな仕事をしていることを知ってあげていただきたいのです

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コメント

こんにちは、
まさに横隔膜固くなりがちです!直にほぐされて全身楽になったこともありまして、
呼吸が浅いからかな~と思ってましたが、それだけではないのですね
いつも勉強になります!

投稿: あかね | 2014/03/27 07:53

いつもリツイートいただきありがとうございます

詳しいことを書きだすときりがなくなりますが
横隔膜の緊張は呼吸よりも自律神経に由来し
横隔膜から胸郭全体に広がり
そこからさらに上部肋骨に付着する頚筋群に緊張をもたらします

だからこそ呼吸が浅くなるわけですが
胸郭ばかりを意識するより横隔膜に目を向けた方が早くよくなるように思っています

投稿: ひろ | 2014/03/27 08:47

おはようございます(^_^)
先週風邪の話しをしましたが、とても大切な事を感じて拝読させて頂きました☆
私達の呼吸法も横隔膜に助けられてりるんですね(^_^)
歌うことも呼吸法が大事ですけど~。
風邪は万病のもと、なんて昔の人は言いましたけど~^^;
痛感しています^_^;
明日は、一生懸命歌って来ます。会場の雰囲気を見て後の事考えようと思ます(´▽`)ノ
桜の花で癒やされました(≧∇≦)b

投稿: おけい | 2014/03/29 06:51

呼吸は実に多くの機関により円滑に行われます
逆に一部がおかしくなると全体に影響を及ぼし
歌うときにちゃんと声がでないこともあります

風邪をひくと呼吸器官だけでなく気管もやられますから厄介です

どうぞ元気に歌ってきてくださいませ

投稿: ひろ | 2014/03/29 07:43

いい読み物をありがとうございます!

私も、以前名古屋で整体師の方の施術を受けた際「横隔膜が硬くなっている」と言われました。
実感するために、と脇の下に自分の手を入れ、深呼吸しました。
硬くない方は倍くらい動くし、空気を吸えているんですよ、と。

無意識だった「横隔膜の緊張」には、毎日の生活の中でどんなことに意識すれば改善されていくと思われますか。

その整体師の方が引退され、聞くことも出来なくなった今、横隔膜に注目されているこちらの記事に目がとまりました。

投稿: みいやん | 2014/03/31 07:58

おっしゃる通りほとんどの人が横隔膜の存在にさえ気づかず生活をなさっておられます
だからこそ横隔膜が緊張していることに気づかないわけです
横隔膜をゆっくり大きく使うことが緩和につながります
つまり大きな呼吸をゆっくりと行うことでそれが可能になります
だからこそ坐禅や瞑想などのとき呼吸に気を使うのです
少しやったくらいで効果が出るものでもありません
5年10年の単位でお続けいただくことが必要です

投稿: ひろ | 2014/03/31 08:24

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