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2012/05/08

スイッチヒッターのすすめ

特技というほどでもありませんが
この仕事をやっていて人の身体を触っていると
おぼろげながらでもその人が日常どんな動きをしているかわかることがあります
とりわけスポーツ選手に関しては種目を当てたりポジションを当てることがあります
当たる確率は高いとはいえませんが
まあ、そこそこいい線はいってると思います
身体に手が触れるとその人の過去の出来事が私の目の前に見えてきて・・・
なんて心霊現象めいたお話ではありません
筋肉の盛り上がり方、硬さ、疲労のたまってる部位など
いろんな情報が手を伝わって私の頭の中に入ってくるのですが
その情報をもとに日頃どんな動作をしているのかを割り出します
その動きをイメージとして再現することでやってる競技を割り出すこともあります
ただしそれなりのレベルのプレーヤーでないと
普通の人とは異なる身体にまで変化することはありませんので
お楽しみ程度で週一回くらいスポーツをやる方では峻別はできません

そして筋肉のハリや疲労具合などを見てその方が苦手としている動きを推察することもあるわけです
もちろん事前情報をお話するときにいただきますので
推理ゲームをやることも滅多にないのですが
よくあるのはスランプに陥ったプレーヤーの身体を触りフィジカル面の問題を探り出すということ
身体の動きというものは一本の筋肉でなされるケースなどあまりなく
むしろ多くの筋肉を同時に作動させ、そのバランス加減で目的たる動きを遂行しようとします
このバランスというのが大きなポイントとなり
主となる筋肉より従となる筋肉の方が発達していて力の入り具合のバランスを損ねていたり
使う筋肉の一部が疲労により仕事ができなかったりするとバランスのいい動きができません
それを見つけだして疲れを取ったり、トレーニングで鍛えるべきポイントをアドバイスするのも私の仕事のひとつ

身体にはクセというものがあります
長い年月同じような動作をしていると一定の個所が鍛えられて強くなったり
あるいは慢性的な疲労がたまり一定の箇所だけ動きが鈍ったりします
それが本人が気づかない程度でも動きを阻害することがあるのです

長い前置きになってしまいましたが
先日スポーツニュースでメジャーに移籍したダルビッシュ有選手が左投げでも剛速球をコントロールよく投げ込み
さらには切れのいい変化球を投げると聞きました
ダルビッシュ選手はすごいなというお話ではありません
わりとプロのアスリートってこういう練習をやっているものです
打者が反対の打席でバッティングをしたり
プロゴルファーでも左打ちの練習をしたりするそうです
とりわけ一流選手ではこういう練習をやっているのをよく聞きます

右利き、左利きというのは身体の多くの部分にあり
手だけではなく、足にもあり、目にも耳にもあります
例えば足にしても右が利き足の人が多いのですがその場合左足には軸足という大仕事が課せられるのを忘れてはいけません
身体の軸が安定することなしに右足が大きく力強く動けるはずもありません
サッカーで強いシュートを撃つ場合左足がしっかり地面をキープしてないと
右足は力を発揮することができません

このようにそれぞれ違った役割でそれぞれの足の筋力が発揮されるわけですから
足を触ってみると使っている筋肉の違いもわかるほどに特化するのです
その特化というのも場合によっては厄介なこともあり
同じ筋肉を同じ動きで使っていると偏った疲労を重ねることにもつながりかねません
筋肉は一本の太い筋肉で成り立っているのではなく筋束という細い線維の集合体なわけなんですが
ひとつの筋肉内に強い弱い、あるいは硬い柔らかいというアンバランスが発生するのです
触っているとこれは一般の人にもよく見かける現象です
逆にひとつの筋肉全体がバランスよく硬縮していることなんてありません
実はこの偏りが筋肉のパフォーマンスの低下を生み出します
一生懸命に練習して鍛えた身体も練習次第では
こういうアンバランスを助長することにもなりかねません
だからダルビッシュ選手らのような一流プレーヤーは身体の中に潜むアンバランスを排除する目的で逆の動きを練習しているのだろうと思います

一生懸命右利きの練習をするのは当然必要ですが
たまには反対の打席に入って身体の動きをチェックするのも面白いですよ
けっこう自分の身体の弱さを実感でき鍛えるべきポイントもわかってくるかもしれません

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