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2011/07/27

手の説得力

言葉というものは相手に対し自分の意思表示をするために存在します
なるべく自分の思いを正確に伝える必要があります
100の言葉を並べてもそれが相手に伝わらなければ言葉としての意義を失うといっていいかもしれません
人間だけではなく多くの動物たちが何らかの手段でコミュニケーションをとり
第一義的には自分の存在に有利なように言葉を操り
さらにレベルが高くなると種族や社会がよりよくなるためにこれを用います

そういった目的を果たすためにより有効に意思伝達をし
相手にそれを理解させる力が必要になります
これを「説得力」といいます
しかしこの力も使いようが大切で自分の利益のためにのみこれを行使して相手に損害を与える場合もあります
いや、むしろこのケースの方が多いように思うのは私の間違いなのでしょうか?
願わくば説得力ある言葉により相手にも利益を与える「Win Win」に導けたら最高ですよね
道具でもそうですが使う人間の気持ちによって良くも悪くも使えるものです
こういうときにこそその人の人格態度が現れるといってもいいでしょう
言葉巧みに難しい論理を振りかざすことが正しいとは限りません
その言葉により導き出される結果により誰が喜ぶかを考えれば評価はできるのではないでしょうか?

言葉には説得力が必要ですが
説得力が伴うものは何も言葉だけとは限りません
同じ歌を聴いても感動できる歌い方もあれば
心に残ることなく聞き流してしまう歌もあります
同じメロディーで同じ歌詞なのに歌い手により涙がでるほど感激することがあります
これは歌い手に説得力があるからです
歌だけではありません
歌詞のない曲の演奏でさえ我々は涙を流すことができますし
勇気をもらったり、ウキウキすることがあります
これらはアーティストの力そのものであり
説得力があり多くの人たちを感動させてこそプロとしてお金がいただけるものと考えます

それができない私から見ると「音」というものの組み合わせひとつで
人の心を動かすこと自体に感動してしまうのですが
ピアノやギターから出る音自体には言語のような意味はありません
それなのにすごいことができるものだと感心します

画家もそうだと思います
筆を持つ手に秘められた力によって
キャンバスに塗られた絵の具に価値が生じ
人々の感動を生みます

同じく私たちの手にも「力」が必要です
もちろん物理的な有形力のことではなく
手が表現する説得力のことです

こういう仕事をした人ならわかると思いますが
身体は固有の意志を持ちます
それは本人の意識とは少し違ったところにあり
本人の意識よりもデリケートな要素もあります
たとえば施術の際に「力を抜いてくださいね」と申し上げても
なかなか力が抜けません
これは本人の意識とは違う次元で身体が警戒している証拠です
身体に強い力が加えられそうな時
無意識に身体が反応して壊されないように身体を固めるのです

普段でも極度に緊張した場面に遭遇すると
無意識に肩に力が入ります
身体にすれば第一次戦闘態勢に入っているのでしょう
攻撃するより先に防御しているつもりかもしれませんし
攻撃のスタンバイをしているのかもしれません
いずれにしてもこういう場面では自分の身体が思うように言うことを聞かないものです

そんな昂った身体に対してやみくもに触りにいっても拒絶されるのが関の山
結局力に頼ることで施術の体裁を保つことはできても
そんな技が身体に対して有効に作用するとは思えないのです

「身体との対話」が必要です
この手が身体に対して何をしようとしているのかを理解させる必要があります
もちろん身体との対話には言葉は必要ありません
本人が納得しても身体が納得しなければ身体を覆う緊張は取れはしません
あくまでも手を使って身体に理解してもらえる説得力だけが必要です
それに納得してくれてメリットを感じてくれさえすれば
身体は自らを開いてくれるのですから・・・

・・・と説得力充分に説く私に
そういう芸当ができるのかというと
これまた別問題だったりするから世の中むずかしいものです

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コメント

こんにちわ!

なるほどと思って、読みました。
言葉って、通じる時もありますが、
不快に思われる事も、たまに・・・。
そこが、難しいところです。

身体との対話、ひろさんのお仕事は
まさに、そうなのでしょうね。

投稿: うさうさ | 2011/07/27 17:02

言葉は意思表示を目的としますがその内容が他の人にとってありがたい内容とは限りませんからね
人間同士の摩擦を避けるために婉曲的な表現を多用する日本語はそのあたりが上手くもあり、難しくもあります

身体との対話はとてもストレートで繊細ですからひとつご機嫌を損ねるとあとあとややこしくなります

投稿: ひろ | 2011/07/27 17:38

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