試食
先日スーパーにいった帰りに
表で幼稚園くらいの子供が駄々をこねていました
泣きじゃくる子供の主張を耳にすると
店内で試食販売をしていたシューマイを食べたかったそうですが
お母さんに叱られて食べられずにお店を出たことで不満が爆発したようです
何を隠そう数十年前私も子供でした
おそらく4歳頃だったと思います
両親がそれぞれお店をやっていたので幼い頃からけっこう野放し状態で育ちました
ある日母親のやっていたお店の近くで試食販売をやっていました
当時出だしたカレールーを売っていたのですが
ナンという洒落たものがなかった時代
食パンを小さく切ってその上に煮込んだカレーを乗せて試食させていました
カレーそのものが珍しかった時代です
食パンの細切れに乗せたカレーが幼稚園児の私にどう映ったか
周辺に漂うカレーの香りが私の鼻をくすぐります
食べたくないわけがありません
それを道行く人にお金をとることもなくあげているではありませんか
いくら幼くてもただでは物はもらえないことを知っています
その光景は私にとって奇異にさえ映りました
ひょっとしたら自分も食べさしてもらえるのではないか
母親につれられた子供たちにもオバサンは満面の笑みで差し出しています
自分ももらえる!
権利意識に似た確信を持ち始め試食販売のブースに一歩ずつ近づきました
正面にたってしばらくたつと私の頭の中で描いていたことはもろくも崩れました
にこやかにカレーを差し出すオバサンの目には私は映らなかったようです
それでも今までと変わらず道行く人にはカレーを食べさします
一緒にいた子供にも優しく話しかけてそれを渡します
それなのにいっこうに私にはくれません
変わらず私と視線を合わせようとしないのです
生まれて初めて理不尽と不合理を体験した瞬間です
そういう言葉を覚えたころになぜオバサンが私だけシカトしてカレーをくれなかった理由がわかってきました
母親がいればきっとくれたのでしょう
他の子供たちに見せた微笑みとともに
幼稚園児がひとりでカレーを買う道理がありません
オバサンとて商売でやっているわけです
こんな子供に一度与えてしまうとアリに砂糖を与えるのと同じ
たちまちカレーを買うはずのない子供たちが集まり食べ尽くしてしまう
さりとて公衆の面前で邪魔だと追い払う訳にもいかずシカトを決め込んだのでしょう
スーパーの表で泣きじゃくっていた子供を見ていて数十年前の記憶が鮮明に蘇ってきました
今ではカレーも珍しい食べ物ではなくなりました
カレーだからといって飛び上がって喜ぶこともありません
少年よ・・・
今は世の中の厳しさを知るがいい
お母さんが無理矢理腕を引っ張り食べさせなかった理由が今にわかる
たとえ理不尽だと思っても世の中には裏も表もあるんだよ
大人になって自分で稼ぐようになれば存分にシューマイを食べればいい
それが大人になるということなんだから・・・
ああ。。久々にカレーが食べたくなってきた
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コメント
実演販売は不衛生だと言われて育ちました
外食もしかりです
どうやら反動が出ているようです
投稿: アルティマ | 2011/02/21 08:27
その理由づけはまさしく今流行りの「方便」ってやつですね
いや。。どっちもの話・・・(爆)
投稿: ひろ | 2011/02/21 08:32
こんにちわ!
読んでいると、何だか、せつない気持ちが
湧いてきたのは、私だけかな?
親が側にいないと言うだけで、あげない、
これって、何?と思うのです。
我が家、今日は、偶然にもカレーの予定です。
ひろさんの話を聞いた後、余計に美味しそう。
投稿: うさうさ | 2011/02/21 15:54
たいしたことではありませんが妙に子供心に刻み込まれた出来事でした
学生時代食品のアルバイトをしましたが売る側の気持ちも嫌というほど理解できます
明日の朝は食パンを浸してお召し上がりになってはいかがでしょうか?
投稿: ひろ | 2011/02/21 16:18
絶対に買わない子供に試食させないのもわかりますが、買わないとわかっていてもあげれば、幼かったひろさんは、きっとお母さまに、美味しかったと話し、お母さまが後日買われ、商売に繋がったと思います。
あげたら良かったのにね~、と思います。
投稿: persian | 2011/02/22 00:14
売る方の立場に立った経験もありますがそういうお子さんにあげて売り上げにつながった試しは皆無です
当然といえば当然ですが、物を売るという仕事は甘くはありません
ガキ大将だった当時の私だったら食べた後に近所の子供を引き連れて舞い戻るに違いありません
買うことなく試食のカレーを食べつくすことも充分考えられました
オバサンの判断は極めて正しかったと評価します(笑
投稿: ひろ | 2011/02/22 07:14