息が詰まる
「息が詰まる」という言葉は精神的な緊張を意味します
精神的緊張により身体がこわばり動きがギクシャクするばかりか
呼吸が浅くなり酸素の供給が追いつかず酸欠状態になるので息が荒くなることさえあります
つまり「息が詰まる」という言葉は単に精神的な状態を表す言葉ではなしに肉体的な現象面にもかかわる言葉とも言えます
具体的な話では呼吸には胸式呼吸と腹式呼吸とがあります
選択的にどちらかの呼吸が行われるかという問題ではなく実際上は両方が共同して行われるのが普通ですが、量的な問題としてどちらにウェートがかかるかというように捉えた方が正しいかもしれません
胸式呼吸は主に内肋間筋などが胸郭を広げることにより息を吸い、肺が自然に収縮をするのを外肋間筋が手助けして呼気が行われるのが通常です
それに対し腹式呼吸は横隔膜が収縮して胸郭を広げるのを主な働きとして息を吸い、腹横筋や骨盤底にある筋肉群が収縮することにより横隔膜を押し上げ横隔膜の弛緩を促進することで呼気が行われます
一般的に腹式呼吸が「いい呼吸法」の見本のように扱われるのには腹式呼吸の方が大容量の呼吸ができ、なおかつ力強く呼吸ができるという利点が存在するからだと考えられます
ここで面白いことに気づいたのですが
「息が詰まる」という言葉において精神的に緊張することで影響を受けるのは横隔膜であるということは予測がつきます
つまり横隔膜が緊張して伸びない状態だと呼気が充分できず炭酸ガスの排出もままならないばかりか、中途半端な状況から吸気が行われると酸素の供給量も減るというものです
おそらくここまでは一般的な意見として言われるであろうものですが、もう一歩踏み込むと興味深いことも見えてくるように思えます
先ほどご説明したとおり腹式呼吸は横隔膜が収縮することで吸気が行われ、腹横筋や骨盤底の筋肉群の収縮により呼気が行われます
ここで覚えておかなければならないのは筋肉の作用は収縮のみであるということです
たまに腹式呼吸の説明で「横隔膜が弛緩することで息を吐く」という説明を見かけますが、厳密に言うとこれは誤りです
なぜかと言えば横隔膜の弛緩は主体的に行われるものではないからです
呼気の主動的な筋肉といえば腹式においては腹横筋であり骨盤底の筋肉群であります
このように腹式呼吸のメカニズムを役割分担の違うそれぞれの筋肉の作用という捉え方をした場合、もう一度「息が詰まる」という精神作用と肉体的作用を分析してみれば緊張して動きが鈍くなるのは横隔膜のみならず、腹横筋や骨盤底の筋肉群も含まれるのではないかと仮説を立ててみました
ここまで少し難しい話が続きましたが、もっと簡単な言い方をすれば緊張しているときは腹部が硬くなっているのではないかということなんです
私の仕事において現場では腹部の緊張した人が多くお見えになります
ゆっくりとお腹を押さえてみると力を抜いてもらってもなお硬い人がいます
その人が訴える主訴とは直接関係なさそうにも見えますが
何らかの原因で極度のストレスを感じておられ
ひょっとしてそれが原因しているのではないかと疑うこともしばしばあります
そんなときにもし腹部に緊張が見られたら、迷わず腹部の弛緩を試みます
クラニオワークの技術のなかに横方向の解放という手技があり、その中でも骨盤隔膜の解放や横隔膜の解放というのがあってもっぱらそれを使うのですが、私なりに手応えを感じています
「急がば廻れ」という言葉もありますが
主訴にアプローチするだけではなく、こういう隠し味の施術が後からじんわり効いてくることもあるようです
エビデンスの欠片もない仮説かもしれませんね
でも「息が詰まる」というこんな言葉の中にもけっこうヒントがあることを知った次第です
もちろんこのお仕事をしたからだと思います
月刊トレーニングジャーナル
「からだことばに学ぶ知恵」
たぶん好評連載中
・・・って最後は宣伝かいッ!
| 固定リンク
コメント
こんばんは(*^^*)
いやいや、宣伝は大切ですよ♪
息が詰まると聞くと
私、閉所恐怖症なので、あの狭くて暗い場所に
行った時に、光を求めて息ができなくなる
あの瞬間を思い出します。
閉所恐怖症って、治らないんですかね(--;)
投稿: chipa | 2010/09/21 19:24
実はオチに困って宣伝で終わりました
真面目な内容でもオチをつけないとおさまらないのは大阪人の血です(笑
さっきの話じゃないですがやはり呼吸がポイントになりそうな気がします
投稿: ひろ | 2010/09/21 20:27