椎間板ヘルニアの原因
冒頭から生々しいですが、これが腰椎の椎間板ヘルニアのMRI画像です
赤い矢印で指した部分が飛び出した椎間板です
今度は上から見た椎間板ヘルニアの図ですが
椎間板の上から強い力が加わることにより
髄核が飛び出し神経を圧迫しています
(以上、画像:図解 腰痛学校)
横から見ると椎骨と間に挟まる椎間板がご覧いただけますが
サンドウィッチ状態になった椎間板に強い力が加わると
つぶれたお饅頭のごとく中からアンコが飛び出します
そういうイメージで考えていただくとわかりやすいかもしれません
通常ヘルニアの説明ですとその次に治療法を紹介するパターンが多いようですが
今回は治療法の説明ではなく、どうしてそうなるのか原因にスポットを当ててみたいと思います
まず考えられるのはスポーツなどの激しい運動により腰椎に強い圧力が加わることです
背骨と背骨の間でクッションの役割をする椎間板がそんなに簡単につぶれることはありません
それでも通常考えられない強い力が加わることはスポーツの世界ではしばしばあります
ところが問題なのは普段運動をしない人がヘルニアになることが多いのはどうしてなんでしょう?
それは椎間板の老化が考えられます
20歳前後で成長が止まり、身長はというとだんだん低くなることが普通です
私も高校生のころ測った身長よりも1.5cmほど背が低くなっていますが
これは背骨や足の骨が磨り減ったのではなく
柔らかい椎間板が縮んだことによりそうなります
新品の座布団はフカフカで厚みもありますが
使ううちにせんべい布団となり薄くなります
柔らかいクッションであるがゆえの宿命かもしれません
これが老化により椎間板ヘルニアになりやすくなる下地と考えていいと思います
あえて「下地」と申し上げたのはこれだけが原因だとすると
高齢になるとすべての人が椎間板ヘルニアになることになり実態に符合しません
だからあくまでも「下地」と考えた方がいいと思います
ここでもうひとつ問題になるのは「姿勢の悪さ」が挙げられます
中腰は腰椎に体重の200%程度の負担をかけます
(まっすぐ立っていると体重の100%程度の負担)
猫背など前かがみに近い姿勢を日常的にしていると
普段から腰椎に対する負担(=椎間板に対する負担)が増えるということです
さてここでは「どうして姿勢が悪いのか?」という問題も一緒に考えたいのです
悪い姿勢というのは我々からみれば要らない筋力を使う、疲れやすい姿勢なのです
逆に正しい姿勢は物理的にバランスが取れているので少ない筋力で維持できる、楽な姿勢なんです
でも筋力が衰えたり疲れたりしてバランスを損なうと、「悪い姿勢」が楽になってしまいます
ここで具体的に名前を出して説明しておきたいのが大腰筋です
(画像出展元不明m(_ _)m)
この図をご覧いただきたいのですが、これは前から見たものです
背骨から(胸椎12番~腰椎4番)出て、骨盤の内側を通り、太腿の骨(大腿骨)に付着しているのが大腰筋です
※本当は他にもいくつかの筋肉が関係するのですが、キリがないので割愛させていただきます
この図で、大腰筋が疲れ果てて、あるいは弱体化して縮んだらどうかるか想像していただきたい
ちょうど弓矢のように背骨は下に向かって強い力が加わります
その力は腰椎の一番下の部分に加算して加わることになります
それが何かの拍子に弱りきった椎間板に激しい力が加わると
中身が飛び出してヘルニアになる
こういう筋書きが一番多いパターンじゃないかと思います
だから腰椎の4~5番辺りにヘルニアがでるようです(日本人の場合)
さてここからが核心部分になるのですが
椎間板が圧迫され髄核が飛び出し神経を圧迫するのが椎間板ヘルニアということなんですが
我々整体なんかでは飛び出した髄核を取り除いたり、元に戻すなんてことはできません
だから「そういう意味」で整体ではヘルニアは治りません
ところが現実問題としていろいろな整体院で「椎間板ヘルニアが治った」と宣伝されているところも少なくありません
これはどういうことかというと大腰筋などが背骨を圧迫することにより神経に触っている場合もあり、その場合筋拘縮を取り除き、大腰筋を柔らかい状態に戻すことによって、神経圧迫がなくなることもあるようです
だから厳密に言うと椎間板ヘルニアにより飛び出した髄核が神経に触っているのが直接の原因ではなく、圧迫された椎骨自体が神経根を圧迫していると考えられ、この場合は椎間板ヘルニアと呼ぶべきではないかもしれませんね
ただ現実問題としてその区別をつけることが困難な場合も多く、椎間板ヘルニアと診断されるケースも往々にしてあるようです
巷で「ヘルニアを治す」と謳っている各種療法も多いようですが上記のような事実がすると推測します
椎間板ヘルニアからくる症状は必ずしも椎間板ヘルニアだけではく、その他の原因からも発生することもあり、その判断が明確にできない場合も少なくないと思います
まあ、違うご意見もあるとは思いますが・・・
私個人の感想としては現場では教科書通りにはいかないことも多く、可能な限りフレキシブルな姿勢は持っておきたいとだけ申し上げておきます
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コメント
勉強になりました。ありがとうございいます。
投稿: | 2008/10/30 09:49
これがすべてというわけではありませんが
私の知る限りこういうケースも多いとご理解いただければ幸いです
投稿: ひろ | 2008/10/30 10:04
ブログ拝見させて頂いております。
身体の考察についてのご意見はバランスがとれたものが多く、いつも感心しています。
この業界、他の考え方を否定したり、極端な原理主義、教条主義で書く人が多い中、先生は貴重な存在ですね。
整体師のイメージダウンが続く昨今ですが、先生のような経験豊富な方が良識ある意見を発信してくれているのは心強い限りです。これからも是非、良質な情報を発信していってください。
(うどん情報は残念ながら関東に住んでいるため、食べに行くことができません。あ~、残念無念!)
投稿: でじゃぶ | 2008/10/30 11:32
ずいぶんお褒めに預かり光栄です
私の考え方としてはクライアントに対して少しでもいい結果がもたらされることが最優先です
いろいろな考え方はあるようですがわが身を守ることに走ると本末転倒です
そういう点ではプライドや拘りも邪魔かもしれませんね
知らないことが多すぎるので人様のお知恵をいただきながら
少しずつ前に進んでいきたいですね
大阪にお越しの際はご連絡ください
整体の難しいことはわかりませんが
旨いうどん屋ならいくらでも教えて差し上げます(笑
投稿: ひろ | 2008/10/30 11:43
先生~
ワシ、腰椎分離症やねんけど
簡単に『ヘルニアの疑いがあります』って、
しょうも無い医者によく言われましたわ
ホンマ、現場は、難しいでしょうね
ワシも、現場で働く職人ですが
ワシの場合は、メッチャ簡単、スーパーフレキシブルでやってますわ
投稿: ひろん | 2008/10/30 18:36
分離症は一時話題になった朝青龍の腰痛ですな
http://youtuukan.cocolog-nifty.com/axis/2007/08/post_38da.html
(去年書いた腰椎分離の記事です)
けっこう多いのは「疑い」という言葉を上手く使ってうやむやにしてしまうケースです
断定するわけでもなく、かといってしっかり調べるわけでもなく・・・
要するに「はっきりわからん」というのを難しい日本語でそういうのかもしれません(笑
そうそう。。。
我々末端の人間は融通きかんと生きていけまへん(^◇^)
投稿: ひろ | 2008/10/31 08:12
私のヘルニアもいつまでもつか・・
だましだまし使いましょう。(^^;
投稿: みさりん♪ | 2008/10/31 18:29
ヘルニアといわれてもその程度やそれから発症する症状はなんともいえませんよ
普段から身体を動かされているので若い状態を維持されていると思いますよ
投稿: ひろ | 2008/10/31 18:35
ヘルニアを検索・調べているとこちらに来ました^^腰の調子が悪く、前屈や座っているとかなり痛かったので整形外科にみてもらいMRIで調べた所、椎間板がだいぶ弱っていて椎間板内の核の様なものがつぶれかけているそうで、これが進むとヘルニアになると言われました。とりあえずコルセットをして前屈中腰あぐら禁止と言われました。一週間ほどで痛みはとれるでしょう。。。との診断でした。安静にしていると徐々に痛みは取れてきている様に思えるのですが(痛み止めのロキソニンを飲まずに良くなってきている程度)、この先はどういった経緯で改善していくのでしょうか?つぶれかけた椎間板は元に戻るのでしょうか? ずっとこの様な症状が続くのでしょうか?。。。悩んでおります。
投稿: なち | 2011/10/09 20:31
ヘルニアという言葉は使ってもその程度や具体的な状態は様々です
またその方の体力・周辺の筋肉の状態もそれぞれ違います
直接関わった方に対してでもどのような経過をたどるかはわからないので
私はその後質問に答えることはできません
ただ実際に診られたお医者様が一週間程度と言われたならばそれを信じるしかありませんね
それと完全に治ってからの話ではありますが
ヘルニアになった原因のひとつに普段から腰周辺の筋肉が硬い状態であったかもしれません
今後再発しないために適度な運動をされることをお勧めします
「つぶれかけた椎間板」もその状態がわかりませんが
本当につぶれてしまったなら元に戻ることはありません
そうならないためにも危機的な状況を脱するための工夫はした方がいいと思います
投稿: ひろ | 2011/10/10 07:13
温熱療法の療術師をしている者です^^
通常の腰痛の痛みの軽減は出来てもヘルニア患者さんの痛みの軽減が出来ずにいる時にこちらのサイトに出会いました。参考に出来る事は参考にさせていただきます。有り難うございました。
投稿: 金たん | 2012/04/02 11:34
コメントありがとうございます
お医者さんでも鍼灸師でも民間療法でもそれぞれできることとできないことがあります
どちらが上でどちらが下という性格の問題でもないと思います
状況を正確に把握してその方に何が一番必要なのかを探し当てるのが大切なのではないでしょうか
またお気軽にコメントをいただければ幸いです
投稿: ひろ | 2012/04/02 12:19
父がヘルニアになってしまいました。
痛くはないようですが、右足が前に出ないので、足を引きずる様に歩いてます。
お医者さんには手術をしても直らないと言われ、左足が悪くなってからでも手術は遅くないと言われたそうです。
今年73才、老人が歩けなくなるのは老いを早めてしまうのではないかと心配です。
なので私も沢山の情報をみて、勉強しています。
先生の頁を読ませて頂いて、父は確かに猫背で、スポーツはしないので足の筋力もなさそうです。
参考にさせて頂きます。ありがとうございました
投稿: のび太 | 2012/05/05 18:14
大変なご様子ですね
「ヘルニア」という同じ言葉を使っても症状の程度は全く異なり
それに伴う治療法も変わってきます
手術は物理的な変化が必要な場合には有効ですが
筋肉等の機能改善はできません
お医者様はそこの部分をお考えなんだと思います
筋肉の機能はすなわち体力ということにもなります
歩けないと老いを早めるというのはまことにおっしゃる通りだと思います
軽いリハビリ程度の運動もお調べいただいてはいかがでしょう
投稿: ひろ | 2012/05/06 09:11